序論
本稿は、2022年の参議院議員通常選挙で国政政党としての地位を確立した参政党について、その成り立ちとイデオロギーを多角的に分析するものである 1。参政党の出現は単なる政治的出来事にとどまらず、現代日本社会が抱えるより深い不安や構造的変化を映し出す社会文化的現象として捉える必要がある。
本稿の核心的論点は、参政党の形成が、デジタル時代の草の根的動員、右派ポピュリズム、そして日本の戦後憲法秩序、特に普遍的人権と権利の公平な分配の原則に対して根本的な挑戦を突きつける急進的かつ修正主義的なナショナリズムの強力な融合体であることを論証する点にある。
分析手法としては、政治学、憲法学、社会学を横断する学際的アプローチを採用する。党の公式文書、党幹部の発言、選挙および財務データ、そして入手可能な学術的・ジャーナリスティックな分析を批判的に検討する。その評価の核心は、人権と権利の公平な分配という観点から行われ、具体的な数値的証拠によって裏付けられる。
第1節 参政党の創生:デジタル時代の「DIY」政治運動
本節では、参政党の起源と組織モデルを解体し、その特異な構造がイデオロギー的軌道と不可分であることを論じる。
1.1 政治的背景と創設ビジョン
参政党は、「今のままの政治では日本が日本ではなくなってしまう」という危機感から、有志が集まってゼロから作られた国政政党として、2020年4月に結党された 3。この国家の衰退とエリート層の失敗という物語は、ポピュリズムの典型的なレトリックである 5。
共同設立者の一人であるKAZUYA氏によれば、当初の構想は自由民主党(自民党)に幻滅した保守層に新たな選択肢を提供することであった 6。これは、当初は主流派保守層の不満の受け皿となることを目指していたことを示唆している。
その中心人物は、神谷宗幣氏である。彼は地方議員から自民党公認での国政選挙への挑戦と落選を経て、自身のYouTubeチャンネル「CGS」を通じたインターネットベースの動員で成功を収めた経歴を持つ 7。彼の歩みは、従来の政治手法から、よりイデオロギー主導型でメディア中心のアプローチへの移行を象徴している。
1.2 イデオロギー的転換:KAZUYA氏の離党
党の命名者でもあり、主要な創設メンバーであったYouTuberのKAZUYA氏の離党は、党の決定的な転換点となった 6。
KAZUYA氏は離党の理由として、党が当初の「保守の受け皿」という構想から逸脱し、神谷氏のリーダーシップの下で彼が「スピリチュアル志向」や「陰謀論的言説」と表現するものへと傾斜したことを挙げている 6。特に、党が反ワクチン・反マスクの姿勢を強めたことが、2021年の離党決意の大きな要因であったと指摘している 6。
このKAZUYA氏との分裂は、参政党の現在のアイデンティティが、結党当初の合意に基づくものではなく、神谷宗幣氏の派閥による党内でのイデオロギー的勝利の結果であることを明らかにしている。政治戦略的プロジェクトから準イデオロギー的運動へのこの転換は、その後の急進性を理解する上で根本的に重要である。当初の目標は、自民党から離れた有権者を獲得するという現実的なものであったが 6、神谷氏は反ワクチンやスピリチュアリズムといった、その枠を超える要素を導入した。これが、より主流派の保守思想を持つKAZUYA氏との分裂を引き起こした。その結果、この分裂から生まれた政党は、神谷氏のより極端で非伝統的な世界観によって定義されるものとなった。これが、参政党がしばしば神谷氏を中心とした「宗教」や「カルト」になぞらえて「神谷教」と評される理由の一端を説明している 6。
1.3 組織モデル:「政党DIY」と財政的自立
参政党は、特定の企業、労働組合、宗教団体からの支援を受けず、一般市民が「ゼロから」作り上げた政党であると自らを明確に位置づけている 1。その運営資金は、党費、個人寄付、そして政党助成金に依存している 1。
組織的には、全国に張り巡らされた地方支部(2024年9月時点で284支部設立済み)のネットワークを基盤とし、草の根の参加意識とコミュニティ感を醸成している 1。
しかし、党規約に定められた意思決定構造は、党執行部である「ボードメンバー」、特に代表(神谷氏)に大きな権限を集中させている 10。代表はボードの議決で可否同数の場合に決裁権を持ち、その代表自身もボードによって選任される。代表選挙は存在するものの、その投票権は一般党員よりも執行部や役職者に著しく重く配分されている 11。
この「政党DIY」というモデルは、強力な支持者の忠誠心と財政的自立を育む一方で、その内部統治構造は高度に中央集権的であり、参加型というイメージとトップダウンという運営実態との間に矛盾を生じさせる可能性を秘めている。党は「政党DIY」というボトムアップ参加のメッセージを掲げ 7、既存政治に幻滅した人々を引きつける。しかし、党規約を精査すると、ボードと代表が主要な意思決定権を掌握していることがわかる。例えば、代表はボードが選出し、支部長は事務局長が指名する 10。代表選挙制度では、全250ポイントのうち100ポイントが少数の国会議員とボードメンバーに割り当てられる一方、はるかに多数の一般「運営党員」には50ポイントしか与えられない 11。この構造は執行部の統制を確実にするものであり、「DIY」が民主的な内部統治よりも、動員と資金調達のためのスローガンであることを示唆している。
第2節 イデオロギーの中核と政策綱領:修正主義的ビジョン
本節では、党の核心的信条と政策を分析し、それらが日本国家と社会を根本的に再構築することを目指す、一貫しているが急進的な世界観を構成していることを論じる。
2.1 基本理念:「国益」、伝統、そして天皇
- 党の理念: 「日本の国益を守り、世界に大調和を生む」 3。
- 党の綱領:
- 先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる。
- 日本国の自立と繁栄を追求し、人類の発展に寄与する。
- 日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる 3。
これらの綱領は、国民主権や個人の権利を重視する戦後憲法とは一線を画し、伝統と天皇に根差した集団的な国民アイデンティティを強調している。
2.2 政策の三本柱:保護主義とグローバリズムへの懐疑
党の重点政策は「1. 教育・人づくり」「2. 食と健康・環境保全」「3. 国のまもり」である 12。
- 食と健康: これは党の魅力の核心部分をなす。食料自給率100%の達成、有機農業の推進、化学肥料・農薬の削減、そして学校給食のオーガニック化を提唱している 13。これは食の安全や健康に対する国民の関心に応えるものである。この主張は「安い輸入品より高くても国産品」という保護主義的な文脈で語られる 13。医療政策では、既存の医療産業複合体への批判と結びつきながら、「対症療法」から「予防医療」への転換を訴えている 13。
- 経済政策: 消費税の段階的廃止などの減税と国民負担率の上限を35%に抑えることで可処分所得を増やすことを主張する 16。これは、AIや製造業といった戦略的分野を重視し、国内で資金が循環する「国民経済の概念を取り戻す」ことを目指す保護主義的な産業政策と組み合わされている 16。
2.3 「創憲」:急進的な憲法ビジョン
参政党は、現行憲法を部分的に改正する「改憲」ではなく、ゼロから作り直す「創憲」を提唱している 18。
- 戦後原則の否定: 彼らの憲法草案は、現行憲法の柱を全面的に否定するものである 19。
- 国民主権: 「天皇のしらす君民一体の国家」という体制に置き換えられる 19。天皇には事実上の法案拒否権が与えられる 20。
- 基本的人権: 人権に関する章は大幅に縮小される。拷問の禁止や刑事手続きにおける適正手続きなど、多くの具体的な保障が削除されている 21。普遍的で固有の人権という概念は、「公益」に従属する権利に置き換えられる 22。
- 平和主義: 平和に関する章(第9条)は存在せず、「自衛のための軍隊」の保持が明記される 19。
- 法的・学術的批判: 主流の憲法学者たちは、この草案を「規範の表現というよりも、自分たちの使いたい言葉を切り張りしただけ」「まるで怪文書のようなもの」と法的に支離滅裂であると厳しく批判している 21。東京大学の石川健治教授は、他者との共存や権力への警戒といった立憲主義の本質を欠いていると指摘する 23。
参政党の政策綱領は、その急進的な憲法ビジョンの論理的帰結である。憲法草案における個人の権利の集団的な「国益」への従属は、外国人や性的マイノリティに対する差別的な政策、そして保護主義的な経済アジェンダに対するイデオロギー的正当化を提供している。提案されている憲法は、国家を天皇中心の階層的なものとして定義し、曖昧な「公益」を掲げつつ、多くの個人の権利保護を削除する 19。この枠組みは、誰が国家の「真の」構成員であり、誰の権利が二次的なものであるかを定義する。したがって、外国人への福祉制限 24、結婚の平等の否定 19、グローバルな貿易よりも国内産業を優先する 17 といった政策は、場当たり的なものではなく、この排外的で国家中心的な世界観の一貫した表現である。憲法が設計図であり、政策がその実行計画なのである。
第3節 参政党の台頭に関する定量的描写
本節では、具体的なデータを用いて党の成長、財政構造、支持者基盤を測定し、分析に経験的な基礎を提供する。
3.1 選挙実績と政治的足跡
- 国政への進出: 2022年7月の参議院選挙で、参政党は比例代表で1,768,385票(得票率3.3%)を獲得し、1議席を確保した 2。この結果により、同党は公式に国政政党となった。
- 地方政治への拡大: 2023年4月の統一地方選挙では、都道府県議会議員4名、市区町村議会議員80名以上を含む計100名の候補者を当選させ、大きな成功を収めた。これにより、全国の地方議員総数は124名に達した 26。当選者のうち91名が新人、35%が女性であり、草の根でのアピール力を反映している 26。
- 継続的な成長予測: 2025年の選挙を想定した世論調査では、党勢の継続的な拡大が示唆されており、ある調査では参議院で14議席を獲得する可能性が 27、別の調査では衆議院選挙で比例187万票を獲得する可能性が示されている 28。
表1:参政党の選挙および政治的成長(2022年-2024年)
指標 |
2022年7月 |
2023年4月 |
2024年9月 |
国政比例代表得票数 |
177万票 |
– |
– |
国会議席数 |
1議席 |
1議席 |
1議席 |
地方議員数 |
– |
124名 |
約140名 1 |
党支部数 |
– |
– |
284支部 |
この表は、参政党が新興勢力から国政・地方政治に確固たる足場を築くまでの急速な拡大を定量的に示している。ゼロから国政1議席、そして100名以上の地方議員、全国約300の支部へと至るこの軌跡は、インターネット上の話題を現実の政治力に転換させる彼らの成功を数値化している。
3.2 草の根政党の財政解剖
- 収益モデル: 党の財政はそのアイデンティティの中核をなす。2023年の報道によると、党の収入16億円のうち、約14億円(約9割)が個人からのものであった 29。これには、参加費500円から3,000円程度の小規模なタウンミーティング(計2億6,000万円)や、大規模な政治資金パーティー(延べ1万3,000人から3億2,000万円)が含まれる 29。
- 公式データ: 総務省の政治資金収支報告書は2022年度 30 および2023年度 31 のものが公開されており、詳細な内訳分析が可能である。
- 党費: 党員からの会費も安定した収入源であり、一般党員は月額1,000円、運営党員は月額2,500円を納めている 32。
党の財政が個人の小口献金に大きく依存していることは、急進的で反エリート的なメッセージングを奨励する強力なフィードバックループを生み出している。企業献金に依存する政党が穏健化を求められるのとは対照的に、参政党の存続と成長は、その支持基盤を分極化するレトリックで活性化させることにかかっている。このレトリックが、党の運営に必要な献金を引き出すのである。党の収入が圧倒的に個人からであるという事実は 29、彼らが有権者に響く独自のメッセージを提供する必要があることを意味する。そのメッセージは、危機、エリートの腐敗、そして国家的な被害者意識であり 9、これが主流から無視されていると感じる特定の有権者層に強く共鳴する 34。この共鳴が献金、イベント参加、そして投票に繋がり、急進主義が弱点ではなく中核的なビジネスモデルとなる自己完結型のエコシステムを形成している。
3.3 参政党支持層のプロファイル
- 人口動態: 支持は高齢層に集中しているわけではない。データによれば40代から50代の支持が厚く、支持者の半数以上が50歳未満である 34。これは自民党や立憲民主党といった既成政党とは対照的である。
- イデオロギー的傾向: 支持者は他の選挙において、石丸伸二氏、田母神俊雄氏、桜井誠氏といった「アウトサイダー」候補を支持する傾向が強い 34。彼らは現職の石破茂首相に極めて低い評価を下し、安倍晋三氏や高市早苗氏に非常に高い評価を与えており、保守スペクトルの右派との強い親和性を示している 34。
- 重要視する政策: 世論調査によると、「外国人の受け入れ問題」を重視する有権者は、参政党に投票する可能性が極めて高い 35。支持層はまた、「我々は反日政治家と外国人に騙され、搾取されている」という強い被害者意識と、主流メディアや既存の制度に対する深い不信感を特徴としている 33。
第4節 批判的評価:参政党と権利の諸原則
本節では、人権と権利の公平な分配という観点から参政党の綱領を分析し、依頼された核心的な評価を提供する。
4.1 外国人政策と平等の原則
- 政策スタンス: 参政党は主要政党の中で最も厳しい外国人政策を掲げている 24。具体的には、外国人への生活保護支給停止、公務員採用の制限、外国人政策を一元管理する「外国人総合政策庁」の設置、日本文化遵守の厳格化などを主張する 24。彼らは「単なる労働力不足を補う目的での無制限な外国人受け入れ」に反対し、高度技能人材を優先するよう求めている 37。
- 憲法学的分析(平等原則・14条): 憲法の人権保障は「権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き」外国人にも及ぶとされており、法の下の平等は cornerstone である。国籍のみを理由として居住者に一律の不利益を課す政策は、憲法上疑義がある。
- 憲法学的分析(生存権・25条): 参政党が主張する外国人への生活保護停止は 24、最高裁判例の誤解に基づいている 38。2014年の最高裁判決は、外国人が現行の生活保護法の下で「法的権利」を有するものではないと判断したが、行政措置として給付を行うこと自体を禁じたわけではなく、この措置は1954年以来の人道的慣行として続いてきた 38。参政党の政策は、この長年の人道的措置を撤廃するものであり、すべての居住者の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」という普遍的人間の尊厳を反映した理念を深刻に脅かすものである。
参政党の外国人政策は、裁量的な行政保護のシステムから、法的な排除のシステムへの意図的な移行を意味する。最高裁判決の狭い法的解釈を武器に、同党は憲法上の平等の精神と人間の尊厳に反し、最も脆弱な長期居住者に不均衡な損害を与える政策を提唱している。現状は、法的に居住する困窮外国人に対する行政措置としての福祉提供である 38。最高裁はこれが現行法上の「権利」ではないと確認したが、その慣行を禁止したわけではない 39。参政党の政策は、この慣行を完全に廃止することを目指す 24。これは法的な必然ではなく、政策的な選択である。この選択は、全く同じ困窮状況にある二人の居住者が、国籍のみを理由に異なる扱いを受けるシステムを作り出すものであり、これは権利の公平な分配と法の下の平等の原則(憲法14条)に対する明白な挑戦である。
4.2 ジェンダー、家族、LGBTQ+の権利と個人の尊厳
- 政策スタンス(ジェンダー): 党は伝統的な性別役割分業を推進し、党幹部は「男は男らしく、女は女らしくでいい」と発言している 42。政策は、母親が家庭に留まることを支援することを重視し、保育所の増設よりも母親への現金給付が望ましいと示唆している 43。女性による子育ては、国家によって「正当に評価」されるべき国家への奉仕と位置づけられている 13。
- 政策スタンス(LGBTQ+): 参政党は結婚の平等とLGBT理解増進法に断固として反対している。彼らの憲法草案は、婚姻を「男女の結合」と明確に定義し、夫婦同姓を義務付けている 19。LGBT理解増進法を女性や子供の安全を脅かすものとして描き 44、この姿勢は活動家から「人間の存在そのものに反対する」ものだと非難されている 45。
- 定量的文脈: このスタンスは支持層に反映されている。調査によれば、参政党支持者は同性婚(45.1%が反対)や選択的夫婦別姓(64.8%が反対)に圧倒的に反対しており、これは一般国民や他のほとんどの政党の支持者とは著しく対照的である 46。
- 憲法学的分析(個人の尊厳・13条、24条): 近年の日本の高等裁判所の判決は、同性婚の法的承認の欠如が、平等の原則(14条)および個人の尊厳と婚姻の自由(24条)に違反する「違憲状態」にあるとの判断をますます強めている 47。参政党の立場は、婚姻に伴う権利と保護の公平な分配を制限するのではなく拡大しようとする、この進化しつつある法的コンセンサスに真っ向から対立するものである。
参政党は、「女性の安全」とトランスジェンダーの人々の権利 44、「伝統的家族」と結婚の平等を対立させる「権利の衝突」という物語を採用している。この修辞戦略は、マイノリティ集団の権利をマジョリティへの脅威として描くことで、その権利を否定する役割を果たす。これは、人権が普遍的で不可分であるという原則を根本的に損なうものである。普遍的人権の枠組みは、権利がすべての人々のためのものであり、相互に関連していると仮定する。参政党のLGBT法への反対論 44 は、ゼロサムゲームを作り出す。すなわち、Aグループ(トランスジェンダーの人々)に権利を与えることが、Bグループ(女性)の安全を奪うという主張である。これは、他の政党の綱領が示すように、差別の解消という法律の本来の目的を無視している 50。この対立を捏造することで、彼らはある集団の不安に訴えかけ、別の集団の法的な権利剥奪を正当化することができ、これは公平かつ公正な権利分配の原則に対する直接的な攻撃である。
4.3 健康、科学、そして健康への権利
- 政策スタンス: 党は反ワクチン・反マスクのレトリックの著名なプラットフォームとなってきた 6。主要な人物は、発達障害の存在を否定するなど、科学的に裏付けのない主張を行い 53、党は後にこれを撤回せざるを得なくなった。これらの見解は、しばしば「医療利権」への広範な批判と結びついている 53。
- 分析: 権利の観点から見ると、これは深刻な問題を引き起こす。健康への権利には、正確で科学に基づいた情報へのアクセスが含まれる。特に政党からの誤情報の流布は、公衆衛生を危険にさらす可能性がある。さらに、発達障害(日本で推定87万人が診断されている 53)のような医学的に認知された状態の存在を否定することは、必要な支援、ケア、雇用の機会の否定につながる可能性のある差別の一形態であり、障害を持つ人々の権利を侵害するものである。
第5節 政治的風景における参政党の位置づけ
本節では、参政党を世界的な潮流と比較し、日本の政治への影響を評価することで、その政治現象としての広範な意義を分析する。
5.1 右派ポピュリズムの日本版
参政党は、世界的な右派ポピュリズムの主要な特徴を示している 5。これには以下が含まれる。
- 反エリート・レトリック: 「清廉な人々」を「腐敗したエリート」や「既得権益」と対立させる 9。
- ナショナリズム/排外主義: 「日本人ファースト」のスローガン 55 や、外国人に比べて自国民を強く優遇する政策 37。
- 生産者主義/保護主義: 国内の生産者や産業を優先し、グローバリズムに懐疑的な経済ビジョン 13。
学術的な分析も、参政党をこの枠組みの中に位置づけ始めており、参議院を国政進出の足がかりとした新たなポピュリスト政党と見なしている 56。
5.2 動員のエンジン:メディア不信と陰謀論的物語
参政党の魅力の核心的要素は、主流メディア 36 や既存の制度に対する根深い不信感である。
党の物語は、批評家が陰謀論と呼ぶものとしばしば結びついている 6。例えば、グローバルな勢力や国内の「反日」分子が意図的に国家を害しているという考えである 33。この世界観は、経済停滞は「グローバリスト」や「財務省の洗脳」のせいだといった、複雑な問題に対する単純な答えを提供する 33。
この反体制的で陰謀論的な世界観は、欠陥ではなく特徴である。それは、認識された内外の敵に対して、支持者のコミュニティを結束させる接着剤として機能している。
5.3 影響力と将来の軌道:オーバトン・ウィンドウの移動
参政党の最も重要な影響は、政治的アジェンダを設定し、主流の保守政党を右傾化させる能力にあるかもしれない。
外国人政策に関して、自民党や他の政党は、参政党の台頭に呼応して、右派基盤の離反を防ぐために「不法滞在外国人ゼロ」のようなスローガンを掲げ、そのレトリックと政策提案を明らかに硬化させている 60。
参政党の主要な影響力は、多数派を勝ち取ることではなく、そのアジェンダ設定能力にある。移民のような問題で声高な少数派を巧みに動員することにより、より大きな政党にその枠組みや政策を採用させ、それによって政治的言説全体をよりナショナリスティックで排外的な方向へとシフトさせている。参政党が強硬な反移民の姿勢で支持を得る 35 と、自民党の伝統的な保守層の一部がこれに惹きつけられる 34。自民党は、右派の有権者を失うことを恐れ、参政党のレトリックや政策アイデアを取り込むことで対応する 60。その結果、かつては周縁的と見なされていた政策が、今や主流の議論の一部となる。したがって、参政党の影響力は、実際の選挙での力強さをはるかに超えて増幅され、政治スペクトルの右側で重力のように機能している。
結論
本稿は、参政党が単なる新しい政党以上のものであることを明らかにした。それは、創設者である神谷宗幣氏による長期的なイデオロギー活動の集大成であり、デジタル動員と草の根金融という強力なモデルを通じて結実したものである。その台頭は、既存の制度への不信と、ナショナリスティックでポピュリスト的な物語への渇望が高まる政治的風土によって促進された。
党の綱領は、「国益」の擁護として提示されているが、国民主権と普遍的人権という戦後の枠組みを解体しようとする急進的な憲法ビジョンに基づいている。外国人、ジェンダー、LGBTQ+の権利に関するその政策は、平等と権利の公平な分配の原則に照らして評価すると、深く差別的かつ排外的であることが判明した。
最終的に、参政党は戦後日本を定義してきたリベラル・デモクラシーの価値観に対する、重要かつ一貫した挑戦を代表している。票、議席、財政におけるその定量的な成長は否定できない。しかし、その最も深遠な影響は、より広範な政治的言説に対する質的な影響にあるかもしれない。国民的アイデンティティ、グローバリズム、社会変動に関する不安を巧みに武器にすることで、参政党は日本の政治における許容可能な議論の境界を積極的に再形成しており、社会のすべての構成員の人権保護に深刻かつ永続的な影響を及ぼす可能性がある。参政党という現象は、成熟した非西洋の民主主義国家における21世紀の右派ポピュリズムの出現に関する、きわめて重要なケーススタディである。
引用文献
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- 参政党 規約 第1章 総則 第1条(名称) 本党は参政党と称する。 第2条(党本部) 本部を東, 8月 3, 2025にアクセス、 https://sanseito.jp/pdf/0toukiyaku.pdf
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- 参政党・松田学代表と対談!積極財政 Web3.0について – YouTube, 8月 3, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=3Svr8_c35Xc
- sanseito- | 新日本憲法(構想案) – 参政党, 8月 3, 2025にアクセス、 https://sanseito.jp/new_japanese_constitution/
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- 「外国人への生活保護は“判例”で憲法違反」は“悪質なデマ”!? 最高裁は何を判示したか【行政書士解説】 | 弁護士JPニュース, 8月 3, 2025にアクセス、 https://www.ben54.jp/news/2156
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- 参院選前半の動向:支持政党ごとのジェンダー政策感への賛否(修正あり), 8月 3, 2025にアクセス、 https://www.sra-chiki-lab.com/250715report/
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- 第349号 同性婚を法律婚の対象としない民法等の諸規定を憲法14条1項および24条2項違反とした大阪高裁判決に関する一考察 – Westlaw Japan | 判例・法令検索・判例データベース | トムソン・ロイター, 8月 3, 2025にアクセス、 https://www.thomsonreuters.co.jp/ja/westlaw-japan/column-law/2025/250527/
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- れいわ新選組: トップページ, 8月 3, 2025にアクセス、 https://reiwa-shinsengumi.com/
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- 参政党とは? 民意と矛盾の間で揺れる新興政党 参議院選挙 結果 – おおさか佳巨(オオサカヨシキヨ), 8月 3, 2025にアクセス、 https://go2senkyo.com/seijika/163389/posts/1163041
- ポピュリズム研究に関する文献一覧 | 研究プログラム – 東京財団, 8月 3, 2025にアクセス、 https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3674
- 【ノーカット】藤井貴彦が党首にきく!参政党 神谷宗幣代表 – YouTube, 8月 3, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=LGjk8m_GCJc
- 『アウトサイダー・ポリティクス:ポピュリズム時代の民主主義』高宮秀典(政経学部助教)共著 | 大学, 8月 3, 2025にアクセス、 https://www.takushoku-u.ac.jp/newsportal/summary/summary_250528_20152.html
- sanseito- | TBSテレビ「報道特集」に対する申入れのお知らせ – 参政党, 8月 3, 2025にアクセス、 https://sanseito.jp/news/n4041/
- 選挙終了!皆様ありがとうございました!20250720 – くつざわ亮治(クツザワリョウジ), 8月 3, 2025にアクセス、 https://go2senkyo.com/seijika/165194/posts/1162906
- 日本の「陰謀論」最新事情、反ワクチン団体・神真都Qと参政党の内実 – ダイヤモンド・オンライン, 8月 3, 2025にアクセス、 https://diamond.jp/articles/-/308599
- 国际观察|高呼“日本人优先”,极右翼势力如何撬动日本政局 – 新华网, 8月 3, 2025にアクセス、 http://www.news.cn/world/20250723/47fc97801ac84f08b1b567d8acda6eae/c.html
- 「日本を動かす 暮らしを豊かに」参院選の公約を発表 | お知らせ | ニュース – 自由民主党, 8月 3, 2025にアクセス、 https://www.jimin.jp/news/information/210909.html
- 【2025年7月】参院選に向け各党「外国人政策」を公約に|自民党・参政党・国民民主・維新・日本保守党 – YouTube, 8月 3, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=Hv1MQfW2HEo
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